プロダクションエール

映画『青空エール』がクランクインを迎えたのは2016年4月15日で、クランクアップを迎えたのは5月22日。しかしつばさを演じる土屋太鳳さんと大介を演じる竹内涼真さんは、撮影よりも早く2015年末からそれぞれトランペットと野球の練習に臨むことに。ふたりとも未経験者という中で基礎からレッスンを重ね、撮影前には先生たちも太鼓判を押すレベルに! 土屋さんは一通り基本的な音を出せるようになったうえで、1年生と3年生のつばさの運指や口の形の違い、シーンごとの感情に合わせた演奏表現、さらに吹奏楽部らしく見える表情や姿勢を猛練習。竹内さんも野球部メンバーの共演者とともに毎回グラウンドに集まって、キャッチボールやバッティングや連携プレー、さらに高校野球部の練習風景の練習を実際の練習とあわせて身体を動かしながら習得。円陣の練習と声出しも兼ねて、最後にみんなで輪になって肩を組み合い、気合を入れる場面も。ある日の練習で声出し担当になった竹内さんが力一杯に叫んだのは、「『青空エール』を素晴らしい映画にしましょう! おーっ!!」。練習から“エール”。こうして『青空エール』は動き出すことに!
ドラマ「下町ロケット」でも共演している、土屋さんと竹内さん。ふたりが『青空エール』関連で初めて顔を合わせたのは、クランクイン2カ月前の2月に行われたポスターと宣伝用写真の撮影。「制服姿で会うのは初めて」と竹内さんが話すと、土屋さんは「(「下町~」では竹内さんは)作業着姿だったので(笑)」と土屋さん。そう言う土屋さんに竹内さんは、「太鳳ちゃんはいつでも制服のイメージです(笑)」。真面目でどこかぎこちないふたりは、役衣裳ということもあってつばさと大介そのもの! 元々、土屋さんは「大介くんは大きいから竹内くんがぴったりなんじゃないかなと思っていたんです」。一方、竹内さんも「つばさは太鳳ちゃんしか考えられないっていうくらいイメージが重なりました」。本編撮影現場でもふたりはつばさと大介そのもので、時にふざけ合い、時にお芝居について真剣に語り合いながら、撮影を乗り切ることに。ロケ地の浜松では、撮影前に一緒に走り込みをする風景も。時間を戻して、ひとつ印象的だったのがふたりが肩を並べて話すポスターの撮影。実際に雑談をしてくださいと指示されたふたり。「サッカー出身だから、太鳳ちゃんと野球(注・土屋さんは野球好き)の話はまったくできないんですよ」と苦笑していた竹内さん。さて、ふたりが実際そこで話した内容は? 今あらためて聞いてみると、ふたりとも「緊張で覚えてないんです(笑)」。初々しいふたりに“エール”。ポスターはもちろん、映画の中のふたりも爽やかで心くすぐる魅力がたっぷり!
 映画『青空エール』の土屋さんのファーストシーン、そして本編芝居部分においてもファーストシーンとなったのは、つばさが放課後の教室で森先輩からトランペットの基礎を教わっているシーン。そのため、土屋さんのセリフの第一声となったのは、音楽用語の「アンブシュア?」(=楽器を吹くときの唇の形のこと)。このとき現場でみんなが頭を悩ませたのが、アンブシュアの正しいアクセント。これはドイツ語のため、人によって言い方は違うとトランペット指導の先生(正しい言い方としては「アンブッシャ」なのだとか!)。きょとんとした顔で「アンブシュア?」と口にして、急いで真剣にメモ書きするつばさ。まさにつばさを象徴するようなファーストシーンに。一方、竹内さんのファーストシーンとなったのは、教室でひとり練習をするつばさを、松葉杖の大介が廊下から見つめるというシーン。こちらも土屋さんのクランクインと同じ日に、同じ場所の浜松にある廃校で撮影。しかし本人の知らないところで、竹内さんはすでにクランクインしていたというエピソードが!? 実はつばさが森先輩とレッスンするシーンで、教室の窓外のグラウンドには声を出しながら練習に励む野球部の姿が映し込まれていて、そこには竹内さんの姿も!! 実際このとき、野球部メンバーはグラウンドで野球練習をしながらスタンバイしていて、それが活かされる形に。「それぞれの夢に向かって頑張っていながらも繋がっているふたりを表現したかった」と三木監督。ファーストシーン前に監督からすでにイン済みと聞かされた竹内さんは驚きっぱなしで、土屋さんもそれに大笑い。クランクインに“エール”。ちょっとしたどっきりが、『青空エール』らしさも生むことに!
土屋さんはもちろん、水島亜希役の葉山奨之さん、森優花役の志田未来さん、春日瞳役の小島藤子さんたちもクランクイン前からトランペットを猛練習。「皆さんから本当に大丈夫か!? って言われてました(笑)」という葉山さんも、撮影時には吹けるようになっていて、球場シーンでは合間に土屋さんと並んで『Our Boys Will Shine Tonight』を吹く姿も。応援シーンとあわせて力の入るものとなったのが、全国吹奏楽コンクール北海道大会のシーン。同シーンは、都内の国立音大講堂にカメラ用クレーンと200人を超えるエキストラさんを導入して大がかりな撮影に。ちょうど原作者の河原和音先生も現場見学にいらしていて、観客役でエキストラ参加! また音楽室や大会のディティールも本物にならっていて、赤いジャケットと袖のリボンは、原作のモデルとなった白石高校が大会で着ているジャケットと実際の参加章を参考にしたもの。譜面台の学校名の入ったボードや観客の拍手のタイミング(映画では指揮者のおじぎ終わりで拍手で、実際には演奏終わりで拍手)など映画ならではの味付けも加えて、演出されることに。吹奏楽シーンにも“エール”。吹奏楽経験者やブラスバンドファンが観ても、納得して感動すること間違いなし!
 竹内さんが「本当にグッときて込み上げてしまいました」と語るのが、野球場での試合のシーン。1年と3年の大会は、それぞれ2週に分けて千葉にある柏の葉公園球場で撮影(1年の時は白翔高校が3塁側、3年の時は1塁側に)。やはり竹内さんの心をつかんだのは、応援。同シーンでもエキストラさんにご参加いただき、スタンドを観客と応援グッズで埋めて撮影はスタート。グラウンドの野球部たちの動きと、スタンドの観客たちの反応をあわせながら、それぞれのカットが切り取られていくことに。撮影前、エキストラさんたちに助監督さんが、塁上にいる野球部キャストを指して、「名前を呼んであげてください!」と助監督さん。エキストラさんたちが名前を呼びながら声援を送ると、キャストは胸を手で叩いてそれに応える。高校野球そのものの応援風景で、そんな事前のやりとりでお芝居が本当の応援に変わっていく。三木監督もエキストラさんたちの所まで出向いて「声を嗄らして、必死に応援してあげてください」と監督自身も声を嗄らして懇願する。そして声援と演奏だけじゃなく、耳には聞こえず目には見えない熱気に包まれる球場。そこで打席に立った竹内さんは、「あの経験をして、野球というスポーツが好きになりました」。また球場の撮影では、さまざまな偶然も重なることに。2度とも天気には恵まれながらも、3年の大会を撮影した2度目のロケでは、雲の動きで日が差したり陰ったり。そんな中で球場にこだましていたのが、助監督さんの声援ならぬ「青空チャンスです!」という声。雲が切れてきれいな青空がのぞいたところで本番へ。それがすべてうまくはまって、無事撮影を終えられることに。さらにもうひとつ球場にこだましていたのが、応援曲ではなくコンクール曲であるはずの『宝島』『ブルースカイ』といった楽曲。しかも聞こえるのは、グラウンドの外から? 実はロケと同じ日に、球場のある公園内でブラスバンドの祭典とマーチングバンドの講習会が行われていて、曲はそちらから聞こえてきていたもの。「すごい偶然でびっくりしました」と土屋さん。三木監督も「何か運命みたいなものがあるんですかね(笑)」。野球にも“エール”。まさにそんなロケとなることに!
初々しくて、真面目で純粋で、それだけにキュンとさせられてしまうつばさと大介の関係。三木監督も、「数々、少女漫画原作をやってきた中で、また全然タイプの違う原作だなと思ったんですよ。ラブストーリーではあるんですが、それぞれひたむきに頑張っていて、お互いがお互いの背中を見て前に進む力を与え合う関係性がとても素敵だなと」と、コメント。それを象徴するようなシーンが、つばさが大介に「好き、って言ったら困る?」と想いを伝えながらも、「今は野球に集中したい」と大介がその思いを拒むシーン。実は同シーンがクランクアップとなったシーンで、埼玉にある公園で撮影。声のシーンに表情、そして間合いにこだわった、切ないシーンとなりながらも、「スポーツをやっている立場として大介の気持ちはすごくよく分かるんですが、自分だったら絶対クラッと来て想いを受け止めちゃいます(笑)」と竹内さん。一方で、「でもそんな大介だからこそ、つばさも好きになるんでしょうね」とも。また印象的なのが、キスシーン。ここで三木監督がこだわったのは、緊張感と初々しさ。身体を不器用に折り曲げながら、つばさに顔を寄せていく大介。ふたりの身長差も印象的なこのシーンでは、思わぬNGテイクも! 実は最初のテイクでは、竹内さんが身体を思いきり曲げながらも位置が高くなってしまい、竹内さんの唇は土屋さんの鼻へ!! まさかの身長差にも“エール”。なんとも可愛らしい身長差キスで、その幻のテイクも観てみたくなってしまう!?